激化する米中貿易摩擦、インドが「漁夫の利」を得るか
|中国のスマートフォンメーカー「シャオミ(小米科技)」の雷軍(Lei Jun)CEOが、インド経済誌「The Economic Times」のインタビューで「今後中国からインドへの投資が本格的に拡大する」と予測した。米中貿易摩擦が激化する中、インドは「漁夫の利」を得ることになるかもしれない。

インドにおける「シャオミ」のスマートフォン市場シェアは2017年にサムスンを抜き1位となった。同社の端末はコストパフォーマンスに優れているとインドでも評判で、今後は冷蔵庫や洗濯機等の家電製品の現地製造・販売、モバイル決済サービス「Mi Pay」の導入、EV事業をスタートさせる計画もあるという。
こうした積極的なインド市場開拓について雷軍氏は「激化する中米貿易摩擦により、中国から米国への投資が減り、代わりにインドへの投資が増加する。インドは中国に次ぐ最も重要な市場になるだろう」と述べ、「世界に通用する才能や旺盛な起業家精神、国や社会が起業環境を支援する等、インドの市場は急成長している。かつての中国がそうであったように、利益を出すには時間がかかるが、シリコンバレーや中国と同じ市場評価をしている」とインドを高く評価した。
一方で同氏は①製造業の非効率さ、②中国や米国と比べると資金調達システム(特にプライベート・エクイティ)が十分ではない点を課題として指摘している。
中国VC勢は2018年には56億ドル(約6127億円)をインドのスタートアップ・エコシステムに投資。物流、小売り、フードテック、AI、IoT、フィンテック等が人気の投資先となっている。
米国企業、インド市場へシフト転換か
米印の戦略的関係構築を推進する米国の団体「USISPF」(※)によると、米国も中国との貿易摩擦の影響、中国共産党の厳しいコンプライアンスを嫌い、約200社の米国企業が製造拠点をインドに移す計画を進めているという。
※米印戦略的パートナーシップ・フォーラム
中国同様、インドも米国と貿易摩擦を抱えているが、インド政府は米国への報復関税を度々先延ばしにしており、両国は次の一手を模索しながら雪解けを待っている状況だ。インド政府は表向きには中国からの投資を歓迎しているが、一方で安価な中国製品が絶え間なく流入し、市場を席巻することを憂慮しており、その解決策として「USISPF」は米印双方の市場に恩恵をもたらす米印自由貿易協定(FTA)を提案する等の動きを見せている。
今後の米印間の交渉次第では米国からの投資がさらに拡大することが予想され、インドは米中両国からの巨額投資を糧に「Make in India」の実現、つまり、“ものづくりのハブ化”を大きく前進させるに違いない。
written by Makoto N
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