進化するフードテック「Zomato」、評価額でライバルの「Swiggy」上回る

フードテックユニコーン「Zomato」(本社:グルガオン)の勢いが加速している。同社は昨年8月、最大のライバル「Swiggy」のお膝元バンガロールで新たなサービス「Hyperpure」(B2Bプラットフォーム)をスタートさせた。

「Hyperpure」は、レストランやホテル等に新鮮で高品質な食材を供給するスタートアップ「WOTU」が前身。「WOTU」の創業者は「PayPal」元幹部のDhruv Sawhney氏で、独自のアルゴリズムにより食材の需要と供給量を予測し、生産者とレストランを効率的に結ぶサプライチェーンを展開していた。しかし、アルゴリズムの基となるレストランと農家の需要および供給のデータが不足していたことから、当初の予測精度は65%程度と課題も抱えていた。

そんな「WOTU」にとって、膨大なデータを蓄積している「Zomato」からの買収案は渡りに船であり、Dhruv Sawhney氏は「Hyperpure」の責任者としてレストラン等で「いつ、どこで、どれぐらい、どのような食材が必要とされているのか」といったデータを事細かに収集、整理。予測精度は95%~97%と飛躍的に向上した。

また、今年2月にチェンナイで発生した“Swiggy異物混入事件”(血だらけのバンドエイドがデリバリーフードに混入していた)が物議を醸したように、インド人の食の安全・安心志向は以前よりも格段に高まっている。これらの相乗効果により、「Hyperpure」は立ち上げから約3ヵ月間でレストランからの注文数を約3倍に引き上げることに成功した。

拡大するフードバリューチェーン

「Hyperpure」の強みは、生産者・食品工場・加工業者と協力しながら、厳格に管理された質の高い食材を持続的に供給できること、不要な仲介業者を排除していること、需要のミスマッチによる無駄な食材を削減していること(農家にとっては肥料等の不要な農業投入財を減らせ、現金化できる作物を作ることができる)、さらに45日~60日先の需要を予測できる先進的なアルゴリズムを有していることだ。現在、同社は100以上のサプライヤーと契約し、契約農家には無農薬野菜の栽培方法を指導している。また、農家の貧困問題は国家的な課題であり、そうした農家に技術面と収入面で寄与している点も注目に値する。

さらに「Hyperpure」は今年3月、バンガロールにある倉庫を移設。新倉庫は旧倉庫の約5倍の広さ(約2787㎡)があり、1日当たり2500軒以上のレストランからの注文に対応できるという。また、今年中に新たに国内9都市に進出し、2020年までに20の倉庫を新設する計画で、将来の海外展開も視野に入れている。

「Zomato」の評価額、ライバル「Swiggy」を上回る

「Hyperpure」同様、「Zomato」のサービスも勢いづいている。Deepinder Goyal氏とPankaj Chaddah氏によって2008年に設立された同社だが、現在は海外24ヵ国に進出を果たすなど急成長している。

Deepinder Goyal氏

「Zomato」はグルメサイトとしてのレビューや検索、フードデリバリー、外食サービスで急成長してきたが、最近では外食を頻繁にしない消費者をターゲットに、提携レストランで無料で食事ができるゴールド会員プログラムを開始して話題を集めた。

「Zomato」は「Never have a bad meal」というキャッチフレーズを掲げているように、「料理が不味ければ客は来ない」というシンプルな理念に従ってビジネスを展開している。

「WOTU」の買収、そして「Hyperpure」の立ち上げはその理念実現の一手段であり、同時にグローバルなフードバリューチェーン構築を目指す壮大な計画の一部でもあるのかもしれない。また、インドの外食文化は発展途上であり、中には一度も外食したことが無い層も多い。そうした潜在的な顧客を将来的に取り込む戦略もあるものと考えられる。

同じくフードテックユニコーンである「Swiggy」は去年12月に評価額が33億ドル(当時のレートで約3630億円)に達したが、「Zomato」は今年3月に36億ドル(約3950億円)に到達。ついにライバルを追い抜くことに成功した。

現状、「Zomato」の収益はコストに圧迫されているが(下図参照)、英国のメガバンク「HSBC」のレポートによると、「Zomato」は今後ユーザー数が増加するにつれ、人件費や配達コストが減少する一方で収益は伸びていくことが予想されており、2024年には1ヵ月間の注文数が現在の約10倍となる3億件(市場シェアにすると37%~40%)を突破することが見込まれている。

「Zomato」アニュアルレポートより

また、「Zomato」の最新アニュアルレポートでは、同社はアプリ上の広告事業を中核事業から外し、フードデリバリー、外食サービス、サステナビリティの3事業を柱に強化していく方針であるようだ。物流にフォーカスしている「Swiggy」と異なる成長モデルを描く「Zomato」。両者の違いはこれまで以上に明らかになったが、インドの激しいフードテック争いの勝者がいまだ決していないのも、また明らかだ。

written by  Makoto N

関連リンク
https://inc42.com/buzz/zomato-ramps-up-hyperpure-to-supply-to-2-5k-restaurants-in-bengaluru/

https://yourstory.com/2019/04/hyperpure-zomato-b2b-farm-to-fork-model

https://tech.economictimes.indiatimes.com/news/internet/zomato-to-invest-around-rs-56-crore-to-set-up-20-more-warehouses-by-2020/69098771

https://inc42.com/buzz/zomatos-latest-financial-report-shows-why-foodtech-is-tough-nut-to-crack/

https://www.zomato.com/blog/annual-report-19

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