インドで再燃する「TikTok」ボイコット運動、新型コロナや国境地帯の緊張も影響か

インドのTwitterではここ最近、「#BoycottChineseApp」というキーワードが何度かトレンド入りしている。読んで字のごとく、「中国アプリをボイコットしよう」という運動で、中でも「TikTok」はTwitterだけでなく、インドの女性権利保護組織や政治家から名指しで批判を受けたり、署名サイト「Change.org」で「TikTokの使用を禁止しよう」(BAN TIK-TOK)というキャンペーンが行われたりと、何かと批判の矢面に晒されている印象だ(※)。

※ 今回の「TikTok」ボイコット運動の発端は、1300万人以上のフォロワーを抱えるインド人インフルエンサーが女性へのアシッドアタックを揶揄する動画をアップしたことにある。この運動でインドのGoogle Playにおける「TikTok」の評価は一時「4.5」から「1.2」まで急降下した

後日、Googleが多くのネガティブレビューを削除したことで、現在は「4.4」まで回復した

インドで1.2億という膨大なアクティブユーザー数を誇る「TikTok」が狙われるのは、今回が初めてのことではない。2019年4月、タミル・ナードゥ州のマドラス高等裁判所は「TikTokが違法コンテンツやポルノを奨励している」等としてダウンロード禁止処置を取った(Google PlayおよびApp Storeからアプリが一時削除されたが、約1週間後に解除された)。また、同年7月には政治家のShashi Tharoor氏が「TikTok」による中国への違法データ送信が安全保障上の脅威になっていることを訴えかけたことで、再び物議を醸すことに。後に運営元である中国の「バイトダンス(字節跳動)」は、インド人ユーザーの情報保護対策として、インドにデータセンターを立ち上げることを発表した(※)。

※ 2020年5月現在、データセンターはまだインドにはない

しかしながら、今回の「TikTok」ボイコット運動は、より大きなムーブメントの一部として行われているような気がしてならない。前述の通り、「TikTok」ボイコット運動と並行して中国のアプリや企業をボイコットしようという動きも出ており、言ってしまえば「中国のすべてをボイコットしよう」という色合いが濃くなっている。

インドでは中国関連のボイコット#が連日のようにTwitterでトレンド入りしている
ネットで拡散されているバーコードで中国製品を見分ける方法

下の画像はTwitter上で「#BoycottChineseApp」「#BoycottMadeInChina」とともに拡散されているものだが、インドで人気の中国アプリとともに、その代替となりうるアプリが網羅されている。インドではお馴染みの電子決済サービス「Paytm」や配車サービス「Ola」といった各種サービスも運営元が中国企業の出資を受けていることから、中国資本が入っていない企業の類似サービスを利用しようという働きかけが行われている。

また、インド市場で圧倒的な存在感を見せている中国系スマートフォンメーカーに対する意識にも変化の兆しが出始めている。インド市場(2020年第1四半期)で「シャオミ(小米科技)」に次ぐシェアを持つ「Vivo」は先日、同社のTwitterで“インド製(Make In India)”を証明する新しいロゴを発表するとともに、端末の化粧箱等に同ロゴを印刷する旨を発表したが、すぐに「インドから出て行け」「インドで組み立てているだけだろ? 部品はどこ製なんだ?」等とあげつらうコメントが殺到したことで、投稿は削除された。その後、あらためて投稿して事なきを得たが、以前であればインド人に歓迎されていたであろう話題も拒否されている印象だ。「Vivo」だけでなく、「シャオミ」や「OPPO」等のTwitterでも同様の傾向が見られた。

「Vivo India」が採用を決めた“Make In India”ロゴ。ロゴはインド進出5周年を記念して公募された
 
コロナ禍で高まるインド人の反中意識

それではなぜインドでこれほどまで“反中意識”が高まっているのか。

それはやはり中国発の新型コロナウイルスの感染拡大が、インド人の生活に大きな影響を及ぼしていることが真っ先に挙げられる。インドの感染者数や死者数はすでに中国を上回っており、インド政府が感染拡大防止を目的に全土を封鎖した影響で、社会的弱者はさらに厳しい生活を強いられることになった。中国政府の初期対応に疑問を抱くインド人は多く、コロナによってもたらされた事態への怒りが中国に向けられているようだ。

インドのスタートアップが今月初めにローンチした中国アプリを検知・削除するAndroid向けアプリ「Remove China Apps」。すでに100万ダウンロードを突破した

もうひとつは、インドと中国の紛争地域で両軍のにらみ合いが常態化しており、軍事的緊張が高まっている点、コロナの蔓延から回復し始めている中国が近隣諸国への“コロナ外交”を展開し、インドに揺さぶりをかけている点もインド人の感情を逆撫でしている。

例えば、隣国のネパール政府は5月18日、新しい地図を発表すると閣議決定したが(後に延期)、この地図にはインドと領有権が争われている地域がネパールの領土に含まれていた。インド政府はこの動きの背後に中国の存在を疑っている。また、パキスタンは5月13日、パキスタンと中国のジョイントベンチャーと60億ドル規模の契約を結び、インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方でのダム建設開始を決定し、インド政府の怒りを買った。

「TikTok」ボイコットの影響でダウンロード数が急増した類似アプリ「Mitron」。しかし、後にパキスタンの企業が開発したアプリ「TicTic」のリブランドである可能性が報じられて物議を醸した

もちろん、こうした問題は一方だけの立場で論じることは難しく、ネパールやパキスタン、中国にも言い分はあるだろう。しかしながら、莫大なチャイナマネー効果で比較的安定していた印中関係が、コロナ禍という不測の事態によって、ほころびを見せ始めているのは間違いない。コロナ収束までの時間が長引けば長引くほどインドの社会や経済へのダメージも大きくなり、両国関係は不安定さを増していくことが予想される。それは周辺国や地域の情勢にも大きな影響を及ぼすことになるだろう。

written by 飯塚竜二

関連リンク
https://theprint.in/opinion/global-print/covid-has-brought-back-chinese-whispers-in-sri-lanka-nepal-is-india-listening/414468/

https://indianexpress.com/article/india/nepal-govt-defers-bill-on-new-map-indian-officials-say-larger-debate-is-on-6430475/

https://profit.pakistantoday.com.pk/2020/05/13/diamer-bhasha-dam-contract-awarded-to-power-china-fwo/

https://www.thequint.com/tech-and-auto/mitron-app-indian-tik-tok-rebranded-from-pakistani-app-tictic-qboxus-anfroid-playstore

https://www.timesnownews.com/technology-science/article/remove-china-apps-anti-china-sentiment-gathers-momentum-flies-past-1-million-downloads-on-google-play-store/599559

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