ユニコーン入り確実、インドのアイウェア「Lenskart」がソフトバンクから資金調達
|アイウェアストア「Lenskart」が「ソフトバンク」からシリーズGで2億3100万ドル(約253億円)を調達したことが明らかになった。今回の資金調達により、同社の評価額は15億ドル(約1642億円)に達すると見込まれており、ユニコーン入りは確実視されている。また、調達資金はインドの小都市での市場開拓、フィリピン、台湾、中東等への海外進出等に活用されるという。
「Lenskart」は本案件に先立つ9月、インド最大のPEの一つ「Kedaara Capital」から5500万ドル(約60億円)を調達し、“スニコーン”(※)として注目されていた。
※ soonicorn (soon to turn unicorn)
今回の「ソフトバンク」からの出資は「SVF」の2号ファンドによるもので、同ファンドからの2番目の投資案件となる(※)。また、「Lenskart」の累積的優先株式の約2290万株(1株当たり約1099円)を取得するという。
※ソフトバンク・ビジョン・ファンドの2号ファンドによる最初の出資先は米介護企業
「Lenskart」は2010年にAmit Chaudhary氏とPeyush Bansal氏、Sumeet Kapahi氏により、ファリダバド(インド北部ハリヤーナー州)で創業。同社はオンライン・オフラインでのオムニチャネル戦略を強みとしており、実店舗はインド全土で535店を展開。今年始めにはシンガポールにも進出を果たしている。
同社はメガネの製造から流通・供給までをカバーする製造小売、SPA(※)として、メガネをはじめ、サングラス、コンタクトレンズ等の様々なアイウェアを手頃な価格で販売。また、100種類にも及ぶフレームの試着や度数計測を自宅で受けられる出張サービスも展開している。加えて、アプリによる3Dフレームマッチング・サービス等、テクノロジーも積極的に活用し、顧客体験を向上させることで強固な顧客基盤を築いてきた。
※specialty store retailer of private label apparelの略。元はアパレル業界のビジネス用語で、自社で企画から製造、小売までを一貫して行うビジネスモデルを指す
損失幅は大幅改善、課題は黒字化
一方で、米国企業の買収や革新技術への投資、内外の店舗数拡大等、積極的な事業展開をしている同社だが、今後こうした投資分をいかに回収するかが課題として指摘されている。
同社はコストが収益を圧迫していることが懸念視されていたが、今月発表された同社の財務報告(2018-2019年の会計年度)では、損失は前年度比で73%減の2億7890万ルピー(約4億2856万円)。売上は56%増の48億6260万ルピー(約74億8238万円)となり、損失面での財務状況は大幅に改善されている。
ただし、費用(コスト)は20%増の51億4520万ルピー(約79億円)になり、赤字幅は20%ほど減少したものの、依然として利益は前年度同様、マイナスのままだ。コストの48%を占める仕入れ費のほか、人件費、広告費等が利益を圧迫したことが要因と見られている。
メガネ市場は100億ドル規模のフロンティア
「Lenskart」は財閥企業「タタ・グループ」傘下の「Titan Eyeplus」(本社:バンガロール)等の資本力のある企業と競合しているが、同社は新しいライフスタイルやファッションへの要求が強いインドの若者たちの支持を集め、アイウェア分野ではトップ企業の一つとなった。
市場関係者によると、インドにおけるアイウェア全体の市場規模は100億ドル(約1兆円)と見込まれているが、「Lenskart」のように大規模展開している企業は少なく、未開拓市場でもある。現状の市場は10〜15の店舗を運営する中小規模の小売店が多く占め、こうした市場は最大4億5000万ドル(約493億円)規模と推定されている。
創業者の一人であるPeyush Bansal氏は「テクノロジーとAIは我々が成し遂げたいことの重要なカギとなる。常に顧客体験を押し上げて、あっと驚くサービスを提供してゆく。それが当社の戦略だ」と述べ、革新技術を通じて今後も幅広く事業展開してゆく計画だ。
written by Makoto N
関連リンク
https://yourstory.com/2019/12/lenskart-fy19-financials-revenue-rises-losses-narrow
https://www.vccircle.com/softbank-vision-fund-to-infuse-275-mn-into-lenskart