デリーで急増する「猿害」、 AI活用で抑制する一大プロジェクトが発足

インドには大気汚染、水不足等の様々な社会的課題が山積しているが、深刻化しているのはそれだけではない。首都デリーでは年々、猿の個体数が増加傾向にあり、猿による市民への襲撃や住居侵入による破壊・盗み行為が頻発している。

インド全土では毎日、約1000人もの人々が猿に噛みつかれ負傷しているという。さらに、乳児や老人が襲われて死亡するケースも報告されており、事態は深刻だ。また、農産物や家屋の被害も増加しており、「猿害」はもはや看過できない段階に達している。

一方でヒンドゥー教では猿は牛と同じく、「神猿(ハヌマーン)」として神聖視されていることもあり、駆除という強硬手段はハードルが高い。また、猿は他の動物と違い、本来の生息地である森が開発等で奪われても都市環境に柔軟に適応しており、近年、都市部で急激に個体数を増やしている。

そうした中、デリー州立大学の研究チーム(※1)はAIを活用したプロジェクトを立ち上げ、こうした「猿害」に立ち向かおうとしている(※2)。

※1 the Indraprastha Institute of Information Technology (IIIT) in Delhi

※2 マイクロソフト社が2017年に立ち上げた環境問題のためのプロジェクト「AI for Earth」の助成金を活用している

顔画像認識でトラッキング

同チームは、デリーに非常に多く生息し、市民との間で深刻な問題を引き起こしている“アカゲザル”を対象に絞って研究を進めている。猿の顔画像を認識データとして取り込み、タグ付けをして行動範囲や個体数を追跡。避妊手術等で個体数の調整に役立てる計画だ。

現在同チームには、93匹の“アカゲザル”から取得した4000の画像データが蓄積されており、各個体を識別できるアルゴリズムの精度向上に取り組んでいる。充分なデータが蓄積された後に、マイクロソフトのクラウドコンピューター「Azure」上で処理するという。

マイクロソフトが提供する「Azure」にはクラウド上で利用可能なAIに関するアルゴリズムやデータ分析等のサービスも含まれており、インドでは個人レベルで臓器移植等の社会的課題を解決するために使用されたりしている。(※)

※ マイクロソフトは通信キャリア大手「Reliance Jio」と提携し、2021年1月にインドのスタートアップ向けに無料「Azure」サービスをローンチ予定で、同国のAI分野に浸透しつつある

同プロジェクトの課題は、現状、研究チームがコツコツと写真を撮るだけでは、増加する猿の個体数にデータ数が追いつかないということだ。

デリー市民を巻き込んだ一大プロジェクトに

これに対して、研究チームは開発中のモバイルアプリを活用して解決しようとしている。同アプリを通して、多くのデリー住民に猿を撮影してもらうことで、位置情報がタグ付けされたデータをデータベースに送信してもらうという取り組みだ。

刻々と更新されるデータにより、研究チームとデリー市の動物管理局は位置情報や群れの数を把握し、必要なら個体数を調整することも可能になるという。従来の直接捕獲と比べれば、人と猿にとって、はるかに安全で負担が少ない方法なのは確かだ。

Rhesus Macaque氏

同プロジェクトを考案したAIの専門家Rhesus Macaque氏は、幼い頃より路上の猫や犬の面倒を見るのが大好きな動物愛好家でもある。本プロジェクト以前には虎の個体認識技術の開発に関わる等、テクノロジーを活用した動物保護に力を注いできた。

同氏は「市民を巻き込んだこのプロジェクトによって、動物と市民が街の通りを共有できるようになるかもしれません」と、デリー市民と猿との共生に豊富を抱いている。

written by Makoto N

関連リンク
https://inc42.com/buzz/delhi-researchers-use-ai-to-tackle-citys-monkey-menace/

https://news.microsoft.com/on-the-issues/2019/11/26/ai-help-india-monkey-population/

https://inc42.com/buzz/reliance-microsoft-azure-to-offer-free-cloud-services-for-smes-startups/

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