インドの5G市場参入に貪欲な中国、注目は「Reliance Jio」の動向

2019年10月14日から3日間に渡ってニューデリーで「モバイル技術フォーラム(IMC)」(※)が開催された。同フォーラムはデジタル・通信技術をテーマにした南アジア最大のイベントで、内外のキャリアやメーカーが5Gを含む最新技術や製品を紹介した。

※「India Mobile Congress、IMC」。インド携帯電話事業者協会(COAI)と通信省傘下の通信局(DoT)が開催

今回の「IMC」には「ファーウェイ」や「ZTE」、「Whale Cloud」(※)等の中国企業も招待され、とりわけ「ファーウェイ」の招待が2020年の5G導入を目指すインド政府による同社への5G分野参入への同意のサインなのか否かが注目された。

※クラウド・AIソリューション等を提供する「アリババ」の子会社

5G市場参入に猛進する中国

「ファーウェイ」等の中国企業は米国を筆頭に、西側諸国から情報分野での安全保障上の強い懸念を抱かれており、インドも米国から「ファーウェイ」排除の圧力を度々受けている。

「ファーウェイ」インド現地法人のCEO、Jay Chen氏は今回の「IMC」への招待を、インド政府から同社への前向きな姿勢ととらえている。「今回の招待は、とりわけ昨今の厳しい状況に置かれている当社にとっては非常に心強いものだ。当社と提携する通信産業やステークホルダーへの力強いメッセージになる」と述べ、インドの5G市場参入に大きな期待を寄せた。

「IMC」に出席した「ファーウェイ」のJay Chen氏(右)

一方で、通信局の高官はこうした「ファーウェイ」の過度な期待に水を差す形で、「中国企業の招待は5Gトライアルや市場参入へのインド政府のいかなる同意を表すものではない」と強く否定。政府は以前より、「5G導入は同国への安全保障への脅威にならないことが最優先課題だ」と繰り返し述べている。また、今回の招待は、習近平主席のインド訪問にあわせた“外交的な贈り物”という見方もある。

「ファーウェイ」にとって世界第2位のモバイル市場、そして経済大国に成長すると見込まれているインドでのプレゼンスは、決して失うことができない”世界における次世代通信戦略の要衝”だ。そのため、米国に対抗して中国は、「ファーウェイ」が排除された場合にもたらされる”深刻な結果”をインドに警告している。

10月に訪印した習近平主席とナレンドラ・モディ首相 画像はモディ首相のTwitterより

「ファーウェイ」はインド事業に9月時点で約35億ドル(約3800億円)を投資、通信キャリア大手の「Bharti Airtel」や「 Vodafone Idea」とハードやソフト面で提携し、3G・4G分野での実績を残している。また、国内シェア首位を狙う「Reliance Jio」との提携にも意欲的だ。

電波オークションは来年3月までに開催

5G電波オークションは当初、今年後半に開催予定だったが、「IMC」に出席した通信相は「今年度中に開催し、あわせてオークション価格も引き下げる」との声明を出した。電波オークションの価格設定を巡っては、韓国やEU諸国と比べて5〜6倍も高いことが業界から強烈な反発を招き、昨年から「5G導入への大きな障害」として論争になっていた。

2025年までの印モバイル市場での主要トピックス GSMAより転載
カギを握る「Reliance Jio」の動向

5Gをいち早く展開できるキャリアとして「Reliance Jio」(2016年に参入した大手財閥「リライアンス・インダストリーズ」傘下の企業。以下「Jio」)が有望視されている。価格競争で収益が鈍化しているインドの通信企業の中で、「Jio」だけが堅実に加入者数を増やしており、高額な5G導入コストに対応できると見られているからだ。

同社は「サムスン」との密接なパートナーシップの下、世界最大級の「4G LTE」ネットワークを築き、加入者数はすでに3億4000万人を超えている(2019年9月時点)。また、基地局や光ケーブル、ブロードバンド回線網等のインフラでも他社より優位にあり、既存インフラを活用し、低コストで5Gを導入できる環境が整っている。

各キャリアの市場シェア(左)とブロードバンドシェア(右)TRAIのプレスリリースより転載

ただし、スイスのメガバンク「UBS」の試算によると、5G導入コストは「Jio」を含む大手キャリア全体で350億ドル(約3兆8032億円)に上り、「Jio」単独では厳しい状況だ。大手3社が通信インフラをシェアすれば、12〜20%のコスト削減が見込めるという。

インドの5Gエコシテムは「Jio」の動向に大きく左右されると言っても過言ではない。仮に、安全保障面での懸念を払拭し、低コストかつ豊富なサービスを武器とする「Jio」と高い技術力を持つ「ファーウェイ」が提携すれば、エコシテムには強烈なインパクを与えることになり、中国には大きな追い風になるはずだ。

2035年には1兆ドル(約109兆円)の経済効果が予想されているインドの5Gエコシテム。来年3月の電波オークションを見据え、政府や中国企業を含む様々なキャリア、メーカーの動きがこれまで以上に活発化していくことが予想される。

written by Makoto N

関連リンク
https://tech.economictimes.indiatimes.com/news/mobile/india-mobile-congress-invitation-to-huawei-not-a-nod-for-5g-play-dot/71573115

https://inc42.com/buzz/will-a-huawei-jio-tie-up-boost-indias-5g-ecosystem/

https://inc42.com/buzz/capex-for-5g-rollout-can-be-reduced-if-india-telcos-share-infra-report/

https://www.thehindu.com/business/Industry/5g-spectrum-auctions-to-be-held-this-fiscal-ravi-shankar-prasad/article29679782.ece

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