投資家の注目を集める“現地語”ソーシャルコマース、「WMall」が新たに資金調達か
|インドのソーシャルコマース・スタートアップ「WMall」が、シリーズBで1000万ドル(約11億円)の投資交渉に入ったことが明らかになった。リードVCは「Chiratae Venture Partners 」と既存VCの「SAIF Partners」で、同社は本案件に先立つ2019年2月にシリーズAで200万ドル(約2.2億円)を調達している。
2018年にバンガロールで創業した「WMall」(※)は、新たにネットを使い始めた女性をターゲットにソーシャルコマース・サービスを提供。ユーザーは「WMall」のアプリや「WhatsApp」、「YouTube」等で様々な商品についてレビュー動画を作成し、初めてオンラインショッピングを利用する女性が安心して商品を購買できるような“橋渡し役”として、購買体験の満足度を高めている。
※創業者はHarmin Shah氏、Rishabh Verma氏、 Anubhav Singh氏
「WMall」を利用するユーザーの居住エリアはTier2都市(人口400万人未満の都市)が多く、英語を使用しない女性たちだ。彼女たちが使用する言語に合わせて、同社のサイト、アプリはローカライズされている。
創業者のHarmin Shah氏によると、Tier2都市では現代的な小売店やショッピングモール等が少なく、同社が提供するオンラインショッピング・サービスへの需要は非常に高まっているという。

英語以外のローカルコンテンツが投資家の注目を集める
格安な通信費とモバイル端末のおかげで、インドのネットユーザーは2019年には6億人を超えると推定され、今後4年間で農村部や小都市に住むユーザーを中心に、さらに5億人がネットユーザーになると見込まれている(※)。また、ネットユーザーの内97%がモバイルからアクセスし、女性ユーザーが42%を占めるという。
※マーケットリサーチ会社「KANTAR IMRB」調べ
インドの英語人口は米国に次ぐ規模(約2億人)だが、英語でサービスを使用しないネットユーザーは今後もさらに増え、いずれ全体の9割に達するものと見られている(※)。こうしたトレンドに敏感な内外の投資家は今年に入り、ソーシャルコマース分野のスタートアップにこぞって投資している。動画ショッピングアプリの「Bulbul」やマーケットプレイスの「DealShare 」等が代表例で、彼らは使用言語に合わせたコンテンツを提供している。
※「Google」とオランダの「KPMG」が合同で調査したレポート

検索主導型から発見主導型へ転換するEコマース
「Flipkart」や「Amazon」のようなEコマースは「検索主導型(search-led )」と言われており、次世代Eコマースはモバイルアプリ中心の「発見主導型(discovery-led)」になると言われている。既存の検索主導型は基本的にユーザー自身で買い物が完結するのに対して、「WMall」のような発見主導型は、友達と買い物に出かける感覚で、気に入った商品を発見、商品レビュー動画を投稿するという参加型の「コミュニティ・ショッピング」と言える。
スマホ中心の10億人規模のユーザーの需要を取り込むには、ユーザーの言語や地域性、ロジスティクス、価格設定等の面でローカライズして満足度を高められるかがカギであり、インド同様に今後ネット人口が増加する他の途上国にも影響を与えそうだ。
written by Makoto N