日本とインドは「最適なパートナー」、ナスコムが東京で大型ピッチイベントを開催

2019年9月3日・4日の2日間、インド最大のIT業界団体「NASSCOM(ナスコム)」 が主催するピッチイベント「Startup Delegation Live Pitch Event」(協力:駐日インド大使館、デロイト トーマツ)が東京の駐日インド大使館で開催された。

本イベントは近年成長を加速し、資金調達ニーズも確実に強まっているインドのスタートアップと、インドをはじめ海外におけるビジネスチャンスを模索している日本企業および投資家をつなぎ、新たなコラボレーションを創出することを目的に開催された。

「NASSCOM」が大型ピッチイベントを日本で開催するのは初めての試みで、1500件以上の応募の中から厳しい選考プロセスを経て選ばれた26社のスタートアップが来日。10分間のピッチ(質疑応答含む)、日本企業・投資家との1on1マッチングミーティングが実施された。

参加したスタートアップはAI、IoT、機械学習等、近年世界で注目を集めている技術を活用し、金融や農業、物流、ヘルスケア、ロボット工学、スペーステック等の分野で活躍する企業が中心。投資ラウンドも拠点とする都市も様々で、インドのスタートアップ・エコシステムの中心地であるバンガロールをはじめ、デリー首都圏、ムンバイ、コルカタ、ハイデラバード等、幅広くカバーしている印象を受けた。

ピッチを行うフル・スタック型企業間電子商取引オンラインマーケット「Bulk MRO」の共同設立者、Devang Shah氏とGaurang Shah氏。二人は一卵性双生児だ
日本が期待するインドのスタートアップとの連携

インドのテック系スタートアップは過去5年間で7500以上増加し、米国、中国に次ぐ世界3位の規模に成長した。昨年は最多となる8社のユニコーン(※)が誕生し、2018年1月〜9月にスタートアップが獲得した資金の総額も前年比108%増となる等、世界中の企業、投資家の関心が一層高まっている。

※ 「Freshworks」「OYO」「Swiggy」「Zomato」「Paytm Mall」「Policybazaar」「Udaan」「Byju’s」の8社

過去5年間で増加したテック系スタートアップの分野 出典:NASSCOM

こうした活況を前にして、日本政府も積極的な動きをアピールしている。昨年10月にインドのナレンドラ・モディ首相が来日した際、日印両首脳は「日印デジタル・パートナーシップ」に合意し、協力覚書に署名。パートナーシップの締結にあたり、最も重視されたのは日本企業とインドのスタートアップを結ぶことであり、その一環として昨夏にはバンガロールに「日印スタートアップ・ハブ」が設立され、日本側は経済産業省職員を常駐させている。

本イベントの冒頭でスピーチに立った元経済産業審議官の寺沢達也氏は「日本はハードが強い。インドはソフトが強い。日本は既存企業が多い。インドはスタートアップが強い」とし、今後日本あるいはインドが米国や中国とビジネスで争いを繰り広げることを想定した場合、最も相互補完性が強いのは日本とインドであり、デジタル革命で世界と戦っていく上では「最適なパートナー」であることを強調した。

寺沢達也氏

さらに1億5000万ドル規模の「日印ファンドオブファンズ」の立ち上げを進めていることについても触れ、安倍晋三首相が今年12月にインドを訪問する際に正式な文書交換を行う予定であることを明かした。

日本とインドの“親和性の高さ”とは?

日本企業とインドのスタートアップの“親和性の高さ”について、実際に会場でインドのスタートアップに話を聞いたところ、スペーステック「SKYROOT」(ハイデラバード)のCEO、Pawan Kumar Chandana氏は「日本とインドはビジネスマインドが似ているし、日本の製造業の強みをインドで活かせられると思う」と述べ、日本企業との協業、資金調達に期待を寄せた。

Pawan Kumar Chandana氏(左から二番目)

本イベントのパートナー企業である「デロイト トーマツ ベンチャーサポート」の大平貴久氏(アジアユニット ユニット長)は「日本のマーケットは縮小気味で、日本企業は海外に出ていかざるを得ない時代となっています。ほかの国と比べるとインドの国内マーケットの伸びは圧倒的で、日本だけでなく、世界から見ても非常に魅力的な市場に映ると思います」と前提を述べた上で、投資余力のある大企業が多い日本と、高い技術力があるにも関わらず、資金調達に苦労しているスタートアップが多いインドがつながるのは、「最適なタイミング」という考えを示した。

大平貴久氏

インドのスタートアップ・エコシステムにはバンガロール、デリー首都圏、ムンバイという3つの主要ハブが存在している。また、最近ではハイデラバードやプネー、チェンナイ、アフマダーバードのエコシステムも急成長している。デリー首都圏はシビックテックやマーケットプレイス関連、ムンバイはフィンテックおよびそのサブセクターが発達している等、それぞれ異なる特徴を有しているが、見方を変えればそれだけインド全体のスタートアップ・エコシステムが成熟し始めているということだ。

完全な成熟期を迎えてしまえば競争はさらに激化し、プレイヤーの勝ち負けも明白となり、日本企業が入り込む余地はますます狭まる。成長期と成熟期の過渡期にある今こそチャンスととらえ、勇気を持って一歩を踏み出すのか、それともほかの市場にターゲットを移すのかーー求められるのは日本企業の判断力と実行力だ。

written by 飯塚竜二

関連リンク
https://www.nasscom.in/

https://www.startupindia.gov.in/japanhub

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