1兆ドルのインド電子決済市場で躍進するAIフィンテック「Recko」
|2019年8月27日、フィンテック・スタートアップ「Recko」が資金調達に成功したことを現地メディアが報じた。海外や国内のエンジェル投資家がリードし、既存の印VC「Prime Venture Partners」も加わった。調達額は非公開だ。
バンガロールを拠点とする「Recko」は2017年創業のスタートアップで、今年6月にはシードラウンドで「Prime Venture Partners」から100万ドル(約1億円)を調達した。
「Recko」はAIを活用した画期的なデジタル決済照合サービスをB2Bで提供。創業から1年という短期間で2億5000万件以上の案件、20億ドル(約2218億円)分の決済処理に同社のサービスが利用されている。クライアントには金融機関を始め、オンライングロサリー「Grofers」、ソーシャルコマース「Meesho」、大手マーケットプレイス等、様々なセクターの企業が含まれている。
複雑化する電子決済の決済照合に革新技術
近年、インドでは官製電子決済システム「UPI」に代表されるように、デジタル決済は市民生活や企業間決済で急速に浸透しつつある。特にB2B決済では、様々な取引先との契約や支払サイクルが複雑に絡みあい、エクセルと格闘していた従来型企業の会計部門にとってデジタル決済の照合業務は大きな負担になっており、それだけヒューマンエラーが多発する危険性がある。
「Recko」はこうした企業の負担やリスクを軽減すべく、AIで”確実かつ定期的”に、自動で決済を照合する革新的なサービスを提供。複数の取引開始から終わりまでの入出金、払い戻し等のすべてのキャッシュフローをAIで自動追跡(過不足や異常などを識別)し、シームレスな会計処理業務をサポートしている。
同社のプラットフォームはSaaSベースで利用できるため、導入コストや料金の面で導入企業は低コストで運用ができる。また、企業規模や取引量、金融や運輸、EC、フードデリバリー等、産業分野に関係なく柔軟に運用できるAPI(※)も強みだ。
従来、6000万件の決済照合処理には3〜4日間かかっていたが、同サービスの利用により30分で済み、50〜80%の人的資源を節約できる。企業にとっては、確実な会計処理でより効率的な企業活動が行えることになる。
※Application Programming Interface
デジタル決済市場規模は2023年には1兆ドルに
「Recko」の創業者はAurya Prakash Sinha氏とPrashant Borde氏。両氏はインド工科大学ガンディーナガル校の同窓生だ。これまでに幾つかのスタートアップを起業、イグジットを成功裏に終えている。両氏はそうした豊富な経験を活かし、創業後の数ヵ月は様々な条件下で徹底的に照合プログラムを試験運用し、国内外からのニーズを確信したという。

これまで獲得した資金で、「Recko」は6ヵ月以内に米国を含む国内外の事業展開や開発に力を入れる計画だ。
インド政府のシンクタンク「NITI Aayog」によれば、インドのデジタル決済市場規模は2023年には1兆ドル(約106兆円)に達すると見込まれている。海外も含めて同分野での取引は増加しており、創業2年目の「Recko」の提供する照合サービスの需要は拡大することだろう。
written by Makoto N
http://thequill.in/2019/08/21/recko-helping-enterprises-with-ai-powered-reconciliation-to-scale/