臓器提供にAI活用、インド人青年が開発したアプリが米MS主催の「AIコンテスト」で入賞
|21歳のインド人学生がマイクロソフト主催の国際的なAIコンテスト「AI for Good Idea Challenge」で3位に入賞した。同コンテストはAIを活用し、医療や環境等の様々な社会的課題に取組む開発者や学生、データ・サイエンティストを対象にしたコンテストで、今年2月に立ち上げられた。
3位入賞を勝ち獲ったPratik Mohapatra君は、バンガロールの私立技術専門学校「 RVCE(R.V. College of Engineering)」に在籍する学生で、今回は彼の開発している臓器提供アプリ「OrganSecure」が高く評価された。同アプリは高度な機械学習アルゴリズム(※)により、臓器移植が必要な患者と適合するドナーの情報をリアルタイムに更新、迅速にマッチングさせるアプリだ。
※ マイクロソフトがクラウド上で提供する「Azure Machine Learning」。

コーディングマニアでもあるMohapatra君は14歳からアプリ開発を始めた。中でも生命科学分野にテクノロジーを応用することに強い関心を抱いている。2018年には、世界最大の学生向けITコンペ「Imagine Cup」(マイクロソフト主催)で彼のチームが開発した偽医薬品を見破るアプリ「 DrugSafe」(※)が、ビックデータ部門のカテゴリ賞を勝ち取っている。
※ インドでは市場に出回っている医薬品の半数近くが偽物と言われている。
ちなみに、今回のAIコンテストで1位となったのは、ウクライナの学生チームが開発した心臓発作予防アプリ「CardioVision」。2位は14歳のインド系アメリカ人の少女が開発した、スマホのカメラ画像で植物の病気を高精度で診断するアプリ「LeafAI」だ。
インドの臓器移植の課題、時間が生存率を左右
2005年以降、インドでは300万人以上が臓器移植を受けられずに命を落としている。WHOによると、毎年およそ100万人が肝臓病と診断されており、インドでは10番目に多い死因となっている。また、ドナーの数も圧倒的に不足しており、腎臓移植を希望する患者が約16万人いるのに対して、ドナー登録はたったの1万2000人。加えて、認証システムの不備で提供された臓器が闇市場で不正取引される事例も報告されている。
インド政府は移植のための補助金を設けたり、多くの州でも移植費用を無料にしたりしてコスト対策を取っているが、適合する臓器を患者の命が尽きる前に確保する”時間的コスト”の対策は対応が遅れている。
1人のドナーが8人の命を救う
「OrganSecure」を利用するユーザーは、まずドナー登録に必要な情報(病歴や関係法規等)をアプリ上で確認後、ドナーとして登録。移植を待つ患者はAIによってリアルタイムで更新される適合ドナーリストを参照し、費用や最寄りの臓器バンク、移植までの時間等の情報を得ることができる。また、病院側は正確なドナー情報を照会でき、不正取引リスクを減らすこともできる。
「OrganSecure」は現在、試験運用の段階だが、Mohapatra君はアルゴリズムの精度を高めるために現地の病院と提携してデータベースを構築し、今後7ヵ月以内に正式リリースする予定だ。
Mohapatra君は「1人のドナーは8人もの命を救えます。このアプリは患者に”時間内に”適合する臓器提供を約束します。アプリ利用者の30~40%がドナーになってくれたら、僕の使命は果たされたことにる」と、高いモチベーションで開発に取組んでいる。
written by Makoto N
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