農家の貧困問題&水不足危機に挑戦するアグリテック「Kheyti」

現在インドでは気候変動による大熱波と干ばつ、そしてチェンナイの水不足に代表されるように、貯水・水道インフラの未整備等が原因で全国的に水不足が深刻化している。政府系シンクタンク「NITI Aayog」の最近の調査では、約6億人が水不足から来る極めて深刻なストレスに晒されており、毎年20万人が汚染水により命を落としているという。

さらに、2030年にはインドの水需要は現在の供給能力の2倍になる見込みで、億単位の国民が水不足に直面することになる。経済的損失も甚大で、最高でGDPの6%に匹敵する損失をもたらす可能性が指摘されている。

インドの水供給の内、約40%を地下水からの供給が占めるが、地下水源は「維持できない割合」で枯渇し続けている。また、下水道の不備等で供給される水の70%は汚染されており、疾病リスク、最悪の場合死に至る怖れもある。水資源確保はインドの逼迫した課題だ。

水不足=農家の死活問題

熱波や水不足は農作物に甚大な被害を与えるため、人口の50%以上を占める農民にとっては死活問題だ。農業政策に重点を置くナレンドラ・モディ首相は既報通り、第2次政権発足後初の政権方針を決める審議会で水資源管理と農業について集中的に取り上げている。

また、モディ首相は最近Twitter上でスプリンクラーや栽培時の水消費量を最小限に抑えられる点滴灌漑の活用で効率的な水利用を強く訴える等、積極的に水不足問題に取り組む姿勢をアピールしている。一方でインドの代表的なスタートアップメディア「YOURSTORY」は「現状、政府の水不足対策は大企業頼みで、農業分野で奮闘するスタートアップにもっと目を向けるべきだ」と指摘している。

農家の貧困問題&水不足に果敢に立ち向かうアグリテック

「栽培に必要な水を90%削減し、7倍の収穫量を実現する」。そんな革命的なアグリテックがハイデラバード(テランガーナ州)で2015年に創業した「Kheyti」(※)だ。

※「Kheyti」(ケイティ)はウルドゥー語(テランガーナ州の追加公用語)で「農業」の意味

同社のサービスの特徴は、小規模農家向けに「Greenhouse-in-a-box」(以下、GIB)と呼ばれる節水型の温室野菜栽培テントを低価格で販売(包括的な農業サービスも含まれる)。「GIB」は点滴灌漑を使用することで水の蒸発を防ぎ、従来の10%程度の水量で高品質な野菜栽培を可能にしている。また、屋外栽培と比較すると、「GIB」栽培は98%もの農業用水を節約できるという大きな利点がある。

従来の野菜栽培では1日に5万リットルの水を必要としていたが、「GIB」ではわずか1000リットルで済む。また、屋内農業なので気候変動に左右されにくく、害虫の心配もいらない。作付けから60日以内で現金収入に直結する付加価値の高い野菜が収穫できる点も特長だ。

「GIB」の価格はサイズ(※)によって異なるが、日本円で約25万~47万円。他社製品と比べて40%低い販売価格に設定されている。農家の月収が平均100ドル(約1万1000円)未満である現状を考えると、「GIB」の導入は割高に感じられるが、「Kheyti」は国営銀行「Bank of Baroda」と提携することで農家が販売価格の約10%の頭金で購入できる仕組みを導入した(残りの代金は銀行が低金利で負担)。そのため、農家は安定した作物栽培で得た収入から少しずつ返済していくことができる。

※最小で186㎡(56坪)、最大で465㎡(140坪)

1回限りの投資で継続的な収入

販売価格の約10%の頭金は、農家が屋外農業でシーズン毎に投資する金額(約4800円未満)に近い。また、「GIB」購入を投資ととらえれば、1回の投資で15年以上継続的に収益を生み出せる。さらに「GIB」の高品質な野菜の種や肥料の提供、財政支援、国内外の専門家によるアドバイス、作物の栽培から市場に出荷するまでのシームレスな農業サービスを無料で受けられる。

創設者の一人であるSathya Raghu氏が「テクノロジーだけでは農家が抱える問題は解決できない。地域社会への草の根的な徹底したアプローチが大切だ」と述べているように、「Kheyti」は小規模農家をまとめ、コミュニティ形成を促し、専門家によるアドバイスや週毎の農業指導等により安定した生産を実現させている。また、コミュニティ単位で生産・販売計画を立てるため、より効率的な農業経営が可能になり、生産コストや価格競争面でのスケールメリットが得られる。

Sathya Raghu氏

15年に渡り野菜を栽培してきたある農家は「GIB」導入後、たった1000リットルの水で以前とは比べ物にならないほどの収益を上げられるようになったという。「夏の熱波の時期に3ヵ月でRs 70,000(約11万円)の収入を得られたことは一度も無かった」 と感嘆の声を漏らしている。

前職は成功した公認会計士だったSathya Raghu氏は「少年の時に貧しい農夫が空腹で泥を食べているのを目撃して以来、農家の貧困問題を解決しようとずっと心に誓ってきた」と起業理由を語る。そんな情熱に突き動かされて奔走して来たSathya Ragh氏の目標は、2025年までに貧窮する10万の農家に「Kheyti」の農業サービスを提供すること。 また、政府の補助金がなくても運営できるビジネスモデルを活かし、「水不足問題で政府と積極的に連携していきたい」と抱負も述べている。

 written by Makoto N

関連リンク
https://yourstory.com/2019/06/hyderabad-agri-startup-kheyti-water-conservation

https://yourstory.com/2017/08/sathya-raghu-ca-khyeti

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

バンガロール視察ツアーはこちら

バンガロール視察ツアー