増加するインド人シニア世代の起業、成功と課題

「スタートアップ起業家」という言葉から連想されるのは、“若さに突き動かされてリスクを冒し、寝る間を惜しんでガムシャラに成功への道を歩む”若者というイメージが一般的だ。特に、人口の半数以上の65%が30歳未満の若者で構成されているインドでは尚更だ。

インドのスタートアップ業界では近年、シニア世代による起業が増加しており、従来のイメージを覆しつつある。

豊富な経験が成功の秘訣

チェンナイ(タミルナードゥ州)でプロバイオティクス事業を展開する「Proklean Technologies」は、工場等で発生する有害物質を無害化するプロジェクトに取り組んでいる。創業者はSivaram Pillai博士で、同社を立ち上げたのは2009年、56歳のときだ。

2015年に発生したチェンナイ大洪水の影響で同社は設備等がほぼ全壊する損害を被ったが、博士は自身の持つ長年の専門知識を活かして会社を守り抜いた。こうした体験から「新しさやスピードが優先される業界でも経験は重要になってくる」と博士は強調する。

同社が現在までに調達した資金は300万ドル(約3億2000万円)程度とチケットサイズは小さいが、2018年には米国のクリーンテック調査会社大手「Cleantech Group」から「アジア太平洋地域の25の優秀なスタートアップ」に選ばれている。

グローバル化しているシニア世代の起業

2018年の「ハーバード・ビジネス・レビュー」によると、米国で成功しているソフトウェア関連の起業家の平均年齢は40代だ。さらに、AIやライフサイエンス、ゲノム、宇宙・航空工学、通信等のより複雑なディープテック分野における起業家の平均年齢は40代後半であると報告されている。

インドにおいてシニア起業家の強みとして指摘されるのが、「国内の様々な社会的課題を解決したい」という情熱、会社運営の資金繰り、会計への強い責任感、そして強固なコネクションだ。さらに長年の経験から“少額の資金でより多くのことを成し遂げる”処世術を身につけていることも特長だという。

起業家の平均年齢が28.5歳と言われているバンガロールで、フィンテックが現在のように一般的になる前の2013年、金融の革新的技術を取り入れて急成長を遂げたスタートアップが「IBSFINtech」だ。

同社は企業へ財務・リスクマネジメント・サービスを提供するプロバイダー。競争が激しく、利益を追及する民間でなく、公益に資する公共セクター出身のバンカーとして20年以上のキャリアを築いてきた創業者3人の平均年齢は52歳で、3人のキャリアを合計すると100年以上になる。

共同創業者のひとり、CM Grover氏は「公共セクターでこれまで培ってきたキャリアを通しての“情熱”がすべてを可能にした」と成功の背景を明かす。「IBSFINtech」は日本の自動車メーカー「マルチ・スズキ」やインドの鉄鋼メーカー「JSWスチール」等の大手クライアントを多数抱え、数々のフィンテック・アワードも受賞してきた。

シニア世代起業家の課題とは?

こうしたシニア世代の起業家が資金調達でネックとなるのは、やはり彼らの年齢だ。投資家は、人生の盛りがすでに過ぎた起業家は将来的な伸びしろや若い起業家との競争に打ち勝つ可能性が低いこと等を懸念材料として挙げる。また、「長年の勤務経験から来る “習慣やこだわり”があり、柔軟性を妨げるのでは」という意見もしばしば聞かれる。さらに、シニア起業家の場合、起業へのモチベーション面で“起業せざるを得ない”のか“積極的に起業したいか”でも投資家の判断は異なってくる。

一方で若手起業家は刺激的な広告等を駆使して投資家から資金を調達すると自信過剰に陥りやすく、「資金繰りや会計が疎かになる深刻な傾向が見られる」と複数のシニア世代起業家は指摘している。

シニア起業家はこうした課題に対して、先入観を捨て、常に新しいことを学ぶ姿勢を維持している。例えば、30代の若いCEOを迎え入れる等して、若さから来るエネルギーと豊富な経験を掛け合わせたシナジー効果で会社をリードしている。

インド初のEコマース「Fabmart」の創業者であるVaitheeswaran K氏は56歳のときに「Again Drinks」をバンガロールで立ち上げた。「Again Drinks」は新鮮な野菜・果物、種実類等のフレーバーミルク/ヨーグルト飲料企業だ。同氏は若手起業家の強みであるエネルギーとパワーを「歳を重ねることで得られる“完全な冷静さ”で克服している」と自信を見せる。

様々な課題が指摘されながらもインドで多くのシニア起業家が成功を収めている事実は、彼らの豊富な経験が多くの投資家を魅了している証でもある。結局は、起業家と投資家の双方でいかに適切なパートナーを見つけられるかが成功の近道と言えるのかもしれない。

written by Makoto N

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