120兆円市場のインド零細商店「キラナ」に押し寄せるデジタル化の波

インドの伝統的な零細商店「キラナ」にデジタル化の波が押し寄せている。米「バンクオブアメリカ・メリルリンチ」のレポートによると、印大手財閥「Reliance Industries(リライアンス・インダストリーズ)」(以下、RIL)は、インド各地に1200万軒以上あると言われている零細商店の内、現在までに1万5000軒をデジタル化、2023年までにさらに500万軒をオンラインで結ぶ計画を進めているという。

インドでは外資によるマルチブランドでの小売業界進出に対する投資規制もあり、同国では「キラナ」(kirana)という伝統的な家族経営の零細商店(いわゆるパパママ・ストア)が食料品や雑貨等の小売市場の90%以上を占めており、フランチャイズ化されたコンビニエンスストア等はまだまだ少ない(※)。こうした零細商店からなる小売市場の規模は現在7000億ドル(約77兆円)に達しており、2020年には1兆ドル(約120兆円)を超えると予測されている。

※2017時点での小売市場全体のシェアは、①零細商店88% ②小売店(フランチャイズ等)8% ③Eコマース3% /IBEF(インド政府経済リソースセンター)調べ

「キラナ」はそれこそ畳一帖程度の路面店、バイクや車等の移動販売、露店までを含み、インドの街や村の日常生活に欠かせない存在だ。消費者と家族ぐるみの付き合い、ツケでの買い物、配達等といったきめ細かなサービスが特徴の地域密着型商店である。

一方で、インターネットやスマートフォンの急速な普及、インド政府が進めるキャッシュレス化、「Amazon」や「ウォルマート」傘下の「Flipkart」等のEコマース勢の拡大等によって、こうした零細小売業界にデジタル化の波が押し寄せている。今年7月導入予定の「GST」(物品・サービス税)への対応(請求書発行等)もデジタル化をさらに加速させるはずだ。

こうした中、前出の「RIL」は、“通話無料、実質端末無料”で業界に価格破壊を引き起こした傘下の携帯電話大手「Jio」(Reliance Jio Infocomm Limited)の4Gネットワークを活用して、500万軒の零細商店に約4730円という安価な価格で「Jio MPoS」 (モバイル販売時点情報管理) デバイスを提供する計画を推し進めている。同デバイスの導入により、加盟店は一番近いサプライヤーからより効率的に商品を仕入れることができ、不要な仲介手数料削減等により売上が向上すると見られている。

また、同社は加盟店手数料(MDR)を無料にし、さらに加盟店に配達や広告、供給力の集約等で収益を強化するロイヤリティ・プログラムも併せて提供するとのことだ。

零細商店への「PoS」導入によるO2Oプラットホームは市場規模が莫大で、未開拓の市場でもあることから、スタートアップも数多く進出している。「SnapBizz」(本社:バンガロール) 「Nukkad Shops」(ハイデラバード) 「GoFrugal」(チェンナイ)等だ。

今年2月に施行された「FDI規制」の改正でインド政府はEコマースの外資規制を強化しており、今後インド企業がどのぐらいの規模の零細商店「キラナ」を自社プラットホームに取り込めるかは、加熱するEコマースシェア争いを展望する上で重要な判断材料となるはずだ。

written by Makoto N

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https://tech.economictimes.indiatimes.com/news/internet/reliance-entry-to-digitise-5-million-kirana-stores-by-2023-report/69300895

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